「彩に満ちた人生でしたね。これからも笑っていて下さい」

私達姉妹が幼い頃、母はよくおそろいの服を縫ってくれました。おやつにはひと口サイズのドーナツを作り、お弁当箱にも同じように小さめのサンドイッチを詰めてくれて…子供が食べやすいように、喜ぶようにと工夫していたのでしょう。遠い記憶を紐解いてみれば、母はその手でいつも私たちに目いっぱいの愛情を注いでくれていたのだと気づきます。それなのに、傍にいるとそのありがたさも当たり前だと感じてしまいがちだったように思います。末っ子として育ったからか奔放で天真爛漫で、幾つになってもどこか少女のような雰囲気すらあった母。時にはそのわがままに呆れるもともありましたが、明るい笑顔を見ていると憎めなくなるから不思議です。舞台に立ち、よく通るきれいな声で民謡を歌い、賞を頂くこともありました。闘病生活は辛かったはずですから、全てから解放され、光差す場所でまたのびのびと歌い、笑い、母らしく過ごしていてくれるのなら何よりです。そっと手を振りながら、「ママさん、よく頑張ったね」と声を掛け見送ります。

喪主 ご息女より