母の歩みは家族の誇り、心からの「ありがとう」

母は、太平洋戦争が始まった翌年の昭和十七年、名古屋から商家の父のもとに嫁いでまいりました。その後五年の間に四人の子を授かり、戦中戦後の厳しい時代に乳飲み子を抱え、現代では考えられない大変な苦労をしたことでしょう。けれども愚痴や弱音を口にすることなく、父を支えながら商売に励み、家事や育児にも奮闘した母にはただただ頭が下がります。生家も商いをしており、根っから商売が好きだったことと、家族のためにという想いがあったから、頑張れたのかもしれません。八十代半ばまで店に出て、お客様と笑みを交わしていた姿がまぶたのうらに浮かびます。困難を糧にして、何があっても前を向き家族のために力を尽くした母に伝えたいのは心からの感謝。向かう先で待つ父もきっと、母の歩みをねぎらうはずです。かけがえのない存在だっただけに悲しみが募りますが、これからは空の上から皆のことを見守ってほしいと願いつつ、遠ざかる背を見送ります。

喪主 ご子息より