見上げる夏空に母の明るい笑顔を思い描いて

母が故郷を離れ、上京してきたのは二十代の時。新宿で小料理店を開き、ずっと自分一人で店を切り盛りしてまいりました。当時、女手一つで私たち子供二人を育てなけれならなかった母に息つく暇はなく、趣味を持つなど もってのほか。毎日とても忙しそうに働いていたことを覚えています。定休日がなかった為、たまの休みには「働かないとソワソワする」と言っていたこともあったほどです。しかし私たち子供から手が離れた頃には好きなことを楽しむ ゆとりが出来ました。社交ダンスを習い、時には その仲間の皆様と共に、国内外へと旅行に出掛けていた母。親子で行ったこともあり、写真には沢山の思い出が残されています。あの頃を振り返れば、七十五歳で病に倒れて以来長い療養生活を余儀なくされたことが切なくてなりません。けれども母は、いつも笑みをたやさず、前を向いて歩んできました。今、伝えたいのは寂しさではなく感謝の気持ちです。心を込めて「ありがとう」と声を掛けて見送ります。

喪主 ご子息、子供たち一同より